2020/4/28 晴れ;新型コロナウィルスは季節性を示すのか(夏に収まる)? ECDC(European Centre for Disease Prevention and Control;欧州疾病予防管理センター)のリスクアセスメントから考える

新型コロナウィルスは季節性を示すのか

忙しくて更新する暇がなくちょっと古い話になってしまったが、先週ECDCのCOVID-19に関するリスクアセスメントが更新された(下記サイト)。

https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/rapid-risk-assessment-coronavirus-disease-2019-covid-19-pandemic-ninth-update

このレポートでは根拠となる引用文献等をきっちり示されており、非常に参考になる。
毎回読んでいるが、今回個人的に一番気にしている季節性(Seasonality)について情報更新があったのでメモしておきたい。
なお、しばしば混同されている感じがするが、今回問題になっている新型コロナウィルスは「SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 )」で、SARS-CoV-2によって引き起こされる病気が「COVID-19(Coronavirus disease 2019)」。

季節性に関して下記のような記述がある(上記レポートから引用、日本語部分は筆者訳)。

・・・Like other human coronaviruses that show peak incidences in the winter months, SARS-CoV-2 might display similar seasonal patterns (冬季に発生率のピークを示す他のヒトコロナウィルス同様に、SARS-CoV-2も同様な季節的パターンを示すかもしれない)[105-108]. However, whether climatic factors, such as temperature, humidity or UV, will suffice to supress the transmissibility of SARS-CoV-2 during the summer months in the Northern Hemisphere remains to be seen(しかし温度や湿度、UVといった季節的要因が、北半球で夏季にSARS-CoV-2の感染性を抑制するのに十分かどうかはまだわからない).
Modelling the SARS-CoV-2 transmission dynamic based on other human coronaviruses suggests that it can drop from winter peak to summer peak by 20% but can still generate substantial outbreaks (R0>1) if no control measures are in place (他のヒトコロナウィルスに基づいたSARS-CoV-2伝染性の動態モデルでは、冬から夏にピークが20%程度減少する可能性があるが、適切な管理がされない場合それでもかなりの流行を引き起こす可能性が示されている)[109]. ・・・

上記の文献[105-108]とその概要はそれぞれ下記の通り(上記レポートから引用、概要は筆者による)。

105. Luo W, Majumder MS, Liu D, Poirier C, Mandl KD, Lipsitch M, et al. The role of absolute humidity on transmission rates of the COVID-19 outbreak. medRxiv. 2020:2020.02.12.20022467.
概要:中国の19地域や他の場所(タイ、シンガポール、日本など)について、絶対湿度とCOVID-19の伝染性を比較。高い絶対湿度は必ずしもウィルスの生存や伝染性を抑制しないという結論。

106. Araujo MB, Naimi B. Spread of SARS-CoV-2 Coronavirus likely to be constrained by climate. medRxiv. 2020:2020.03.12.20034728.
概要:John Hopkins大学のSARS-CoV-2の地域内感染データを用いてEcological niche modelsのトレーニング(機械学習の)を実施。モデルからSARS-CoV-2の流行に気候がどの程度適合しているかについて月毎に変化を予測。結果、感染が広がりやすい季節がある(つまり季節性がある)らしいことが分かった。これによると例えばイタリア、スペイン、アメリカなどは7~9月には感染が広がりにくいが、9月を過ぎると6月までは感染が広がりやすい。

107. Sajadi, Mohammad M. and Habibzadeh, Parham and Vintzileos, Augustin and Shokouhi, Shervin and Miralles-Wilhelm, Fernando and Amoroso, Anthony, Temperature, Humidity and Latitude Analysis to Predict Potential Spread and Seasonality for COVID-19 (March 5, 2020). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3550308.
概要:局所感染が起きている地域と起きていない地域での気候データを比較。感染が起きている地域の気候は似ている(平均気温5-11℃、絶対湿度4-7 g/m^3など)ことが分かった。

108. Yao Y, Pan J, Liu Z, Meng X, Wang W, Kan H, et al. No Association of COVID-19 transmission with temperature or UV radiation in Chinese cities. European Respiratory Journal. 2020:2000517.
概要:中国の様々な地域における気象学的条件(温度、相対湿度、UV線量とか)とCOVID-19の拡大の関連性を調査。いずれも有意な相関なしという結果。

あと、以前リスクアセスメントの第7版(今回のは9版)でウィルスの環境中での生存に関し記述があったのでここでついでに書いておきたい(下記、ECDCのサイトから引用。日本語部分は筆者の訳)。

・・・The environmental stability of viable SARS-CoV-2 is up to 3 hours in the air post aerosolisation, up to 4 hours on copper, up to 24 hours on cardboard, and up to 2~3 days on plastic and stainless steel, albeit with significantly decreased titres. These findings are comparable with the results obtained for environmental stability of SARS-CoV-1(環境中での安定性についてSARS-CoV-2はSARS-CoV-1(SARSを起こしたウィルス)と同程度である).・・・
・・・In vitro tests showed that in transport medium, the virus is stable at 4 ℃ but sensitive at higher temperatures. At 4 ℃, the virus was stable up to 14 days, but inactivated after 5 minutes at 70 ℃(培地中で4℃だと2週間安定だが70℃だと5分で不活性化される、).・・・

以上のことを踏まえて考えると、以前から日記で書いている通り個人的にはやはり夏場に少なくともいったんは流行の拡大は抑えられると予想する。
予想というか願望な気がしないでもないが。
根拠はまず、

・他のコロナウィルス科のウィルスも季節性を示している
・SARS-CoV-2の環境中での安定性(生きてるかどうか)はSARS-CoV-1と同程度。SARSは夏ごろに終息している
・高温なほど不活性化される速度が速くなる
・そもそもCOVID-19は冬季に流行が始まっている

ことから、夏場の環境がウィルスの安定性を低下させるのはほぼ確実だと思う。
上述したように温度などの気候条件と感染拡大に相関がないとする報告もある。実際、最近は熱帯であるシンガポールでも患者数が増加している。ただ、普通に考えて屋内での感染も起こっていると思われるが、空調の効いた屋内では気候の影響を受けにくい。いかに熱帯でもそれだけで完全に感染拡大は防げないということなのだろう。

また、患者が増えれば増えるほど免疫を持つ人が増加していると考えられる。そして人々のウィルスに対する防御意識も高まっている。
なので、少なくともこれから夏を迎える北半球では流行の拡大は抑えられていくだろう。

ただ、南半球はこれから冬だし、これから本格的に増加していく国もあるかもしれない。
世界規模で感染が収まるのはまだまだ先が見えない・・・。

新型コロナウィルスが季節性を示すという確実な根拠などないが(そもそも未来のことを正確に予測できるわけがない)、季節性を示さないとする根拠などもっと無い。
泥沼のような状況が続いているので悲観的になりがちな気がするが、レポートを読んでやや自信が持てた。
ECDCさんありがとう。


忙しい

現在新型コロナウィルスの影響で在宅勤務になっており、一日中子供と一緒にいる。
忙しくて日記を書く暇が全然ない。
今日のも数日かけてやっとかけた。
次はいつかけることやら・・・。